episode9 re:ブランシュネージュの目覚め
礼拝堂の先、懺悔室のその更に先にあった地下室へ足を踏み入れるのに不思議と恐怖はなかった。
これを見つけたのは今朝のこと。偶然シスターの部屋の探索を行ったところ思いがけず見つかったこの鍵。そして、懺悔室に入った時に見つけたこの地下への入口。
恐怖、恐怖、恐怖、恐怖、疑問。
何者かに引っ張られるかのようにここまでやって来たがその疑問が頭から消えない。
君はもう答えを知っているはずだよ。
誰かが笑って言っている。
地下室への階段は湿っていて酷く暗い。足元を照らすこの蝋燭の光だけが頼りだった。
「不気味だ......」
何度見てもこの光景はおぞましい。
何度見ても......?
あぁ、また誰かの記憶だ。
それこそおぞましい。一体何を見たっていうの?
アーノルドがそっと階段の奥に待ち受けた扉を開く。この扉は想像以上に重くて、力を入れなければ開けることが出来ない。だから、身体全体を使って......。
こんなこと一体どこで教わったというのか、またこの感覚だ。心を見透かされているようで気持ちが悪いなとアーノルドは自身の胸を抑える。
確かにここに来たのは初めてなのに。怖くないよ、大丈夫だよと自分たちの震える手でそれを慰める双子の優しさが無力な俺をひきたてていた。
扉の先にあったのはただ闇。
1寸先も黒、あえて言うならば闇に埋め尽くされている。この先を灯りを点さずに歩くのは困難だろう。暗い石畳の廊下には、整頓された棚が備え付けられているようでその棚には何故か以前出ていった子供たちの大切な持ち物だったりが遺されている。
暗い闇に包まれてはいるが、様子をみれば定期的に誰かが掃除を行っていたりしているようで地下室にしては綺麗にされている。
「ここへの扉の鍵はシスターの部屋にあっただろ......」
ローワンが万が一の可能性を考えてその額に手を当て冷や汗をかいていた。まさか、とは思うが。
「......うん。こんな怪しい場所だけどシスターが出入りしたのは間違いないみたいだ。」
そうローワンの言葉に返事をしたのか、真実を口にしたのかペルセイが呟く
「シスターは一体ここで何をしていたのかしら......。こんな薄汚い場所で何を......。」
分かりきったことを、何故か言葉にしてはっと口を抑えたようにしたリンダがいた。彼女の頭には混乱と疑問しか残されていない。
答えならそこにあるだろう。と指を刺されたその部屋の先へ何故か足が動く。誰の指図か、過去の自分か。
ガチャガチャと扉を開けば、目の前に広がっていたのは夥しい量の白骨が並ぶ地下墓地。ぐんと気温が下がるにつれ全身の血も沸騰していく。
やがてそれは、弾け飛びこの地下室を血で赤く染めることになるかもしれない。
また、悲鳴が響く。まただ。
【探索開始】
2日目 シスターの死後
セレーネは譁ュ鄂ェ縺ョ譎ゅ?らスェ繧貞─縺?閠?↓陬√″縺ョ豁サ縲蠖シ繧画が鬲斐?陦?邯吶℃鄂ェ莠コ縲螟ゥ遘、繧呈軸縺定。?縺ョ譁ュ鄂ェ繧呈懇縺偵h縲
ミア・リッピンコットは通路を照らした。 引っ掻き傷の様な物を見つけた。恐らく人間の手で出来た物 だなさ くう。
イザベラは蝋燭のあかりがフッと消えた。暗く先の見えない地下室がたちまち恐ろしく感じてきた。
ローワンは驢懊>謔ェ鬲斐?蟄宣繧医?ゅ◎縺ョ陦?繧呈→繧
ガルシェは口を塞いだ。時々鼻にこびりつく、何かが焦げたような悪臭が気わ
リンダは蝋燭のあかりがフッと消えた。暗く先の見えない地下室がたちまち恐ろしく感じてきた。
ペルセイは口を塞いだ。時々鼻にこびりつく、何かが焦げたような悪臭が気わ
フロイドは驢懊>謔ェ鬲斐?蟄宣繧医?ゅ◎縺ョ陦?繧呈→繧
アーノルドは通路を照らした。 引っ掻き傷の様な物を見つけた。恐らく人間の手で出来た物 だなさ くう。
【探索終了】
子羊は誰で、狼は誰なのかと問われれば。
きっと僕らは狼だ。
決められた運命の線路に従ってカタカタと揺れ動くだけで、その行く先は終わりのない環状線だと言うことは見ている景色を見ればわかるだろうに。分からないふりをしていたのか。その方がきっと救いか。いや私たちに救いなどないのか。
また真実の停車駅がぼくらを待ち受けていた。
_________
いくつもの拷問器具が並び血だらけになったこの部屋で見つけた娼婦のフリをしたマリア像があった。そして、きっと彼女が落としたであろう聖書がある。
そっと、中をぱらぱらと覗く。
「......STIGMA?」
とき明かされる真実を信じる鍵は自分の記憶だった。
死にかけの病人が自分の死期を悟るように、私達も自分の過ちを悟る。
何度も何度も繰り返したあの光景とこの海馬に残る不確かな記憶だった。
名もなき確信が僕らをここから突き放していく。
信じてきた外壁がぱらぱらと音を立てて崩れていき、中から醜い化け物が顔を出す。
自分たちへの悲鳴はもう意味をなさない。
「悪魔の子、STIGMA、断罪......」
ピースは揃っていて真実だっておおよそ顔を出してご挨拶している。
「どう......して......」
そんな顔しないで、フロイド。
ここには居ないシスターの暖かい手が彼の頬を撫でることはない。ただ冷たい空気が彼の穢れた身体を舐めるように撫で付ける。戸惑いはやがて怒りに変わる。
騙していたのは彼女だった。
きっと騙していたのは僕らだった。
聖痕なんてものは所詮悪魔に付けられた印に過ぎなくて、自分たちはいずれ死ぬ運命にあった。どんなに懺悔した所で意味の無い救いを求めていたんだろう。
あれだけお祈りをしたって願いが叶うはずがなかった。これまでの幸せな日々が胸に突き刺さって痛い。幸せがある分だけ苦しみが胸のはしから押し寄せていく。
「どうしたらいいの......?もうシスターもいない、誰もいないのに......」
繋いで歩いてきたこの道は何だったのか。無駄な努力を神さまは笑っていたのねとミアとイザベラが顔を合わせて言っている。その表情は澱んでいて今すぐにでも......。
「あの子たちは何も言っていなかったわ......」
死人に口なし。今更何も持たないだろう彼らに何かを求める彼女の姿は物乞いのようだった。イザベラの言葉を聞いたミアの俯いたその前髪で表情が読み取れない。
「何を馬鹿な事言っているのよ、こんなふざけた話本気で信じているの?」
やめてよ、リンダが困ったように怒ったように呆れたように言う。こんなこと御伽噺だと言って見なかったことにすればいい、この先もずっとこのまま皆で一緒に居ればいい。そんな未来も。彼女はそう言いたかった。
「........................」
「本気で......信じてるの?」
子供たちの目に光はとうになかった。ただ嗤うことしか。
嫌よ!絶対に!子供のように喚く彼女の肩をローワンが支えてあげる。彼だって望んでいたんだ。こんな真実じゃないこと。なのに、どうしてか分かる。分かりきっている。逃れられない現実がもう目の前まで来ている。あとは受け入れるだけか。
「そんな......俺はまだ......なにも」
広い地下のこの空間は声がよく響く。ガルシェの小さな呟きが木霊していく。小さな後悔はそうやって心に根を貼っていく。
自然と涙がこぼれ落ちていって、もう救いなんて無いのだと証明されていく。
そっと息をのむ声がする。
「......シスターの死だけが不信だ。僕達が本当に罪人ならどうして僕達だけが生き残っているんだ......」
彼が冷静に思考を巡らせて得たのは彼女の死の謎。彼女はどうして。その疑問の答えはもうしっていたが......。
「違うわ、違うわよ。SISTERは死んでないの。断罪は終わらないのよ。」
「フフ......アハハハハ!!!!!」
「オッカシイ、可笑しいわ。とっても愉快だわ!」
「ようやく私、SISTERの言っている意味が分かったの。神に祈るのはこの瞬間の為だったのね」
「あぁ、もっと早く教えてくれれば私だって」
狂った果実が実をつける。
地獄とは、その意味を辞書で調べました。
僕らは。
next……
礼拝堂の先、懺悔室のその更に先にあった地下室へ足を踏み入れるのに不思議と恐怖はなかった。
これを見つけたのは今朝のこと。偶然シスターの部屋の探索を行ったところ思いがけず見つかったこの鍵。そして、懺悔室に入った時に見つけたこの地下への入口。
恐怖、恐怖、恐怖、恐怖、疑問。
何者かに引っ張られるかのようにここまでやって来たがその疑問が頭から消えない。
君はもう答えを知っているはずだよ。
誰かが笑って言っている。
地下室への階段は湿っていて酷く暗い。足元を照らすこの蝋燭の光だけが頼りだった。
「不気味だ......」
何度見てもこの光景はおぞましい。
何度見ても......?
あぁ、また誰かの記憶だ。
それこそおぞましい。一体何を見たっていうの?
アーノルドがそっと階段の奥に待ち受けた扉を開く。この扉は想像以上に重くて、力を入れなければ開けることが出来ない。だから、身体全体を使って......。
こんなこと一体どこで教わったというのか、またこの感覚だ。心を見透かされているようで気持ちが悪いなとアーノルドは自身の胸を抑える。
確かにここに来たのは初めてなのに。怖くないよ、大丈夫だよと自分たちの震える手でそれを慰める双子の優しさが無力な俺をひきたてていた。
扉の先にあったのはただ闇。
1寸先も黒、あえて言うならば闇に埋め尽くされている。この先を灯りを点さずに歩くのは困難だろう。暗い石畳の廊下には、整頓された棚が備え付けられているようでその棚には何故か以前出ていった子供たちの大切な持ち物だったりが遺されている。
暗い闇に包まれてはいるが、様子をみれば定期的に誰かが掃除を行っていたりしているようで地下室にしては綺麗にされている。
「ここへの扉の鍵はシスターの部屋にあっただろ......」
ローワンが万が一の可能性を考えてその額に手を当て冷や汗をかいていた。まさか、とは思うが。
「......うん。こんな怪しい場所だけどシスターが出入りしたのは間違いないみたいだ。」
そうローワンの言葉に返事をしたのか、真実を口にしたのかペルセイが呟く
「シスターは一体ここで何をしていたのかしら......。こんな薄汚い場所で何を......。」
分かりきったことを、何故か言葉にしてはっと口を抑えたようにしたリンダがいた。彼女の頭には混乱と疑問しか残されていない。
答えならそこにあるだろう。と指を刺されたその部屋の先へ何故か足が動く。誰の指図か、過去の自分か。
ガチャガチャと扉を開けば、目の前に広がっていたのは夥しい量の白骨が並ぶ地下墓地。ぐんと気温が下がるにつれ全身の血も沸騰していく。
やがてそれは、弾け飛びこの地下室を血で赤く染めることになるかもしれない。
また、悲鳴が響く。まただ。
【探索開始】
2日目 シスターの死後
セレーネは譁ュ鄂ェ縺ョ譎ゅ?らスェ繧貞─縺?閠?↓陬√″縺ョ豁サ縲蠖シ繧画が鬲斐?陦?邯吶℃鄂ェ莠コ縲螟ゥ遘、繧呈軸縺定。?縺ョ譁ュ鄂ェ繧呈懇縺偵h縲
ミア・リッピンコットは通路を照らした。 引っ掻き傷の様な物を見つけた。恐らく人間の手で出来た物 だなさ くう。
イザベラは蝋燭のあかりがフッと消えた。暗く先の見えない地下室がたちまち恐ろしく感じてきた。
ローワンは驢懊>謔ェ鬲斐?蟄宣繧医?ゅ◎縺ョ陦?繧呈→繧
ガルシェは口を塞いだ。時々鼻にこびりつく、何かが焦げたような悪臭が気わ
リンダは蝋燭のあかりがフッと消えた。暗く先の見えない地下室がたちまち恐ろしく感じてきた。
ペルセイは口を塞いだ。時々鼻にこびりつく、何かが焦げたような悪臭が気わ
フロイドは驢懊>謔ェ鬲斐?蟄宣繧医?ゅ◎縺ョ陦?繧呈→繧
アーノルドは通路を照らした。 引っ掻き傷の様な物を見つけた。恐らく人間の手で出来た物 だなさ くう。
【探索終了】
子羊は誰で、狼は誰なのかと問われれば。
きっと僕らは狼だ。
決められた運命の線路に従ってカタカタと揺れ動くだけで、その行く先は終わりのない環状線だと言うことは見ている景色を見ればわかるだろうに。分からないふりをしていたのか。その方がきっと救いか。いや私たちに救いなどないのか。
また真実の停車駅がぼくらを待ち受けていた。
_________
いくつもの拷問器具が並び血だらけになったこの部屋で見つけた娼婦のフリをしたマリア像があった。そして、きっと彼女が落としたであろう聖書がある。
そっと、中をぱらぱらと覗く。
「......STIGMA?」
とき明かされる真実を信じる鍵は自分の記憶だった。
死にかけの病人が自分の死期を悟るように、私達も自分の過ちを悟る。
何度も何度も繰り返したあの光景とこの海馬に残る不確かな記憶だった。
名もなき確信が僕らをここから突き放していく。
信じてきた外壁がぱらぱらと音を立てて崩れていき、中から醜い化け物が顔を出す。
自分たちへの悲鳴はもう意味をなさない。
「悪魔の子、STIGMA、断罪......」
ピースは揃っていて真実だっておおよそ顔を出してご挨拶している。
「どう......して......」
そんな顔しないで、フロイド。
ここには居ないシスターの暖かい手が彼の頬を撫でることはない。ただ冷たい空気が彼の穢れた身体を舐めるように撫で付ける。戸惑いはやがて怒りに変わる。
騙していたのは彼女だった。
きっと騙していたのは僕らだった。
聖痕なんてものは所詮悪魔に付けられた印に過ぎなくて、自分たちはいずれ死ぬ運命にあった。どんなに懺悔した所で意味の無い救いを求めていたんだろう。
あれだけお祈りをしたって願いが叶うはずがなかった。これまでの幸せな日々が胸に突き刺さって痛い。幸せがある分だけ苦しみが胸のはしから押し寄せていく。
「どうしたらいいの......?もうシスターもいない、誰もいないのに......」
繋いで歩いてきたこの道は何だったのか。無駄な努力を神さまは笑っていたのねとミアとイザベラが顔を合わせて言っている。その表情は澱んでいて今すぐにでも......。
「あの子たちは何も言っていなかったわ......」
死人に口なし。今更何も持たないだろう彼らに何かを求める彼女の姿は物乞いのようだった。イザベラの言葉を聞いたミアの俯いたその前髪で表情が読み取れない。
「何を馬鹿な事言っているのよ、こんなふざけた話本気で信じているの?」
やめてよ、リンダが困ったように怒ったように呆れたように言う。こんなこと御伽噺だと言って見なかったことにすればいい、この先もずっとこのまま皆で一緒に居ればいい。そんな未来も。彼女はそう言いたかった。
「........................」
「本気で......信じてるの?」
子供たちの目に光はとうになかった。ただ嗤うことしか。
嫌よ!絶対に!子供のように喚く彼女の肩をローワンが支えてあげる。彼だって望んでいたんだ。こんな真実じゃないこと。なのに、どうしてか分かる。分かりきっている。逃れられない現実がもう目の前まで来ている。あとは受け入れるだけか。
「そんな......俺はまだ......なにも」
広い地下のこの空間は声がよく響く。ガルシェの小さな呟きが木霊していく。小さな後悔はそうやって心に根を貼っていく。
自然と涙がこぼれ落ちていって、もう救いなんて無いのだと証明されていく。
そっと息をのむ声がする。
「......シスターの死だけが不信だ。僕達が本当に罪人ならどうして僕達だけが生き残っているんだ......」
彼が冷静に思考を巡らせて得たのは彼女の死の謎。彼女はどうして。その疑問の答えはもうしっていたが......。
「違うわ、違うわよ。SISTERは死んでないの。断罪は終わらないのよ。」
「フフ......アハハハハ!!!!!」
「オッカシイ、可笑しいわ。とっても愉快だわ!」
「ようやく私、SISTERの言っている意味が分かったの。神に祈るのはこの瞬間の為だったのね」
「あぁ、もっと早く教えてくれれば私だって」
狂った果実が実をつける。
地獄とは、その意味を辞書で調べました。
僕らは。
next……
スポンサードリンク
COMMENT FORM